コーヒーの発祥や起源にまつわるエピソード
コーヒーの起源には諸説がありますが、中でも2つの有名なエピソードがあります。
1つ目の説が、ヤギ飼いの少年カルディの話です。17世紀に書かれた物語に記されているもので、9世紀ころのエチオピア高原が舞台の話です。ヤギ飼いの少年カルディは飼っているヤギたちが昼も夜もなく興奮しているのを見つけました。調べてみると山腹にある赤い木の実が原因であるということがわかりました。試しに食べてみると爽快になり、活力がみなぎってきました。この実のことを知り合いの修道僧に告げました。話を聞いた修道僧は、夜通し続く儀式のときなどに利用することにしました。居眠り防止に役立つ木の実として重宝されました。この実こそコーヒーの実だったという話です。
2つ目の説は、16世紀に書かれた物語に記されているものです。13世紀モカで、イスラムの神秘主義修道者のシェイク・オマールが発見したとされる話です。オマールが不祥事を起こし、街を追放されたときに、空腹で山中をさまよっていると鳥に導かれて赤い実を見つけました。試しに煮出すと独特の良い香りがし、飲んでみると疲れがうそのように消え去りました。罪を許されて街に戻った後にその効用を広めたとされる話です。ただし、いずれも史実ではなく、伝承や物語の話です。
コーヒーに関する最古の文献
事実をもとに残されている一番古い文献は、アラビア人の医学者の一人が記した医学集成です。9世紀から10世紀ころに書かれたとされ、その医学者が書き遺したものを弟子たちが編集したとされています。その医学者は、コーヒーの薬理効果を認めており、自生しているコーヒーの種子の煮出し汁をバンカムと名づけ、患者に飲ませていたとされています。彼の記した文献には、コーヒーには消化や強心効果および利尿の効果があるという詳細な臨床結果が記されており、これはコーヒーに関する貴重な初期の文献とされています。その後も、医師や研究者などはじめ多くの人がコーヒーに関する記録を残しています。そのため後世においても、ただの飲み物という認識ではなく、薬という認識の面も併せ持つようになったのです。起源について正確なところはわかっていませんが、文献が書かれたときにはコーヒーの種子が発見されていたことがわかります。
コーヒー発祥の地
エチオピアやイエメンなど、コーヒー発祥の地であるとされている国があります。これは、コーヒー豆の原料となるコーヒーノキという植物が古くから生息しているからです。その中でも発祥の地として有力とされているのが、エチオピアです。エチオピアはコーヒーノキの自然林が多く存在し、エチオピアを産地とするアラビカ種が、コーヒーノキの栽培の始まりだと考えられています。それからイエメンに渡ったとされていますが、このときのコーヒーノキの原産地がエチオピアのカッファであるとされ、この地名がコーヒーの語源であるという説も存在するためです。